貧乏旅行に連れられて

  去年の夏、台北を旅したときのこと。

 

物価は安いし、1週間だからどうにかなるだろう。

そう思い、現金を4万円弱しか持って行かなかった。見通しは甘かった。少ない持ち金で交通費、食費、宿泊費その他全てをやりくりしなければならなかった僕は貧乏旅行を続けた。結果的に最終日に結構余ったのだけど。

当然高級料理など食えるはずもなく、屋台街や安い食堂を巡った。その中の小さな楽しみが魯肉飯だった。台湾を代表する家庭料理の一つで、タレを染み込ませた肉を白米にのせる。値段も驚くほど安い。たったこれだけの料理がなぜか本当に美味かった。

あまりに美味かったので、行く先々で食っていたのだが、やがて味付けが少しづつ違っていることに気づいた。そこから何処が美味いかを勝手に比べた。

特に美味いな、と感じたのは花蓮台北中山にあった店。台湾独特の開けた食堂と、店を出るときに無愛想な店員が微かに見せる、「どうだ、美味かったろう。」と得意気な顔が印象的だった。

 

大金では決して買えない、貧乏が教えてくれた僕だけの楽しみだ。

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