今まで幾つかの国を周ったけど、必ず僕がカメラを向けるものが二つある。路地とそれから猫達だ。

 カメラの履歴を見ると、どの国に行ってもそこにいれば猫の姿を撮っている。

 だが写真を見返して気づく。猫の写真はあるのに犬の写真は一枚も無いのだ。

 何故犬の写真は撮らないのか。それは自分でも分からない。別に意識的に撮らなかった訳では無い。でも不思議なくらい1枚も無いのだ。

 この写真は台湾で撮ったものだ。夜の喧騒が嘘のように消え去り賑わいを見せていた店がほぼ全てシャッターを下ろしている。その様相は九份をモデルにしたと言われる千と千尋の神隠しの朝そのものだった。

 いつも何度でもを聴きながらそんな事をぼんやり考えていた僕は宿への帰路で彼らに出会った。彼らもまた、眠そうであった。

 そういえば台湾に行く前は特に精神的に落ち込んでいて療養のつもりで急遽チケットを取った。

 僕が犬に惹かれないのは彼らが人間に飼われているからかもしれない。

 でも、旅先で首輪をつけた猫に会った事はまだ無い。自由気ままに過ごす彼らの中に僕は、自分を日常生活から解放してくれる旅を見出しているのだろうか。

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